法事を終えて
あれから16年の歳月が過ぎたのかと思うと、確かに驚かずにはいられない。
しかし、あの春の穏やかな日に祖母が逝いた時、私はほんの子供で、成人式さえ終えていない年齢だったのだ。
故郷から東京に出てきてわずか2週間あまり。
訃報を聞いて故郷に帰ることになるなんて誰が予想できただろうか。
早朝にそれを知って長い電車の岐路をほとんど何も考えることもなくただ車窓だけを眺めていたような気がする。
誰の葬儀の時も同じように私はその臆病さゆえにそれに向き合うことが出来ないのだ。
それを頭で感じても心で受け止めることが出来ない。
そうして幾度となくやり過ごしてきたのである。
16年が経過し、あの日の事がようやく自分の心の中で感じることが出来たような気がする。
この春の穏やかな日和の中、墓参を済ませ、遠くから鶯の鳴き声がした時である。
人は誰も大切なことを教えてくれない。教えてきたのは自然の風景である。
自然の中に一人たたずむとき、ようやく心の奥から感じ取ることが出来るのである。
その後、家族と食事をして改めて思うこと。
こうして何気なく穏やかな日を過ごせることに、感謝せずにはいられないのだ。
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